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大西と関根は同期入社。互いに同じ取引先を5年近く担当している。 カテゴリーキラーと呼ばれる玩具専門店の最大手の取引先は、圧倒的な店舗
数と圧倒的な売上を誇る突出した存在である。取引先は近年新しい層の「集 客」に力を注いでいた。「大人」を集客するためには思い切った斬新な商材を 検討する必要があった。ハイターゲットのキャラクター商品の展開は既にあ
るので、もっと違う視点からの提案が求められていた。ある日、大西が担当 バイヤーに呼ばれた。「新しい切り口が欲しい。」大西は以前からプラネタリ ウムや地球儀、食玩など雑貨に近い感覚のおもちゃが、大人の女性に静かな
ブームとなっていると感じていた。それを伝えるとバイヤーも目を輝かせた。 女性雑誌やトレンド情報なども見て研究しながら女性バイヤーと企画を練っ た。こうして「石すくい」という商品ができあがった。これは様々な天然石
をカップにつめてセレクトできるもので、規模は小さいながら、ターゲット とした客層に好評だった。新しい風が少しずつ吹き始めた。 |
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| 集客力のある商材を採り入れた魅力ある売場作り。新規層に頻繁に来店してもらい、従来の玩具へと興味関心を誘導できれば理想であろう。大西、関根たちが営業を通じて培った時代の様々な風や匂いを感じるチカラに期待がかかった。とはいえ戦略という確固たる答えなど最初からあるものではない。普段の取引先との会話や売場の様子を観察し、手探りで見つけた断片をつなぎ合わせて1つのカタチにして、試しつつ流れにしていくしかない。そして1つの試みが好評を得たということは次なるチャレンジを意味した。関根がこれを引き継いだ。取引先のバイヤーは「石すくい」で得た小さな手応えをもとに、何かもっとストーリーを伝えたいと考えていた。関根も同感だった。女性ファッション誌や商業施設なども見て勉強するうちに、新しいストーリーや季節感、共感を覚えるコーナーを創ることで、大人の女性客はもっと来店するだろうと考えた。数ヶ月かけてバイヤーに何度も提案を繰り返した。独身女性のバスタイムが長くなっている事、1日の疲れを癒す時間としてお風呂を楽しみたいと考えていることなどを説明し、バイヤーと詰めてバスグッズに行き着いた。そして女性の間で関心の高い「癒し」や「健康」を意識した、それでいてちゃんと玩具として成立する商材を確保するために、幾つものメーカーをあたって奔走した。 |
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数ヶ月後、試験的にスペースが確保された。そこで関根は一連の商品をどう見せていくか悩んだ。その店舗にとって斬新な商材に相応しい提案性のある売場は簡単ではない。バイヤーと相談しながら試行錯誤した後、ようやくお風呂で使える照明を中心とした楽しいバスタイムが感じ取れる空間ができあがった。次の日、新しい魅力を感じてか敏感な女性客が早速売場であれこれ見てまわっていた。客が商品に手を触れる様子を見た関根も取引先バイヤーもまた新たな手応えを感じていた。売場として定着していくのはまだこれからである。しかし取引先をとりまく市場環境は激しく移り変わっており、家電量販店やディスカウント・チェーン、カテゴリーキラーを集積したパワーセンターなど小売りの業態は多様化する一方だ。変化にどう対応し、どう「集客」していくかがますます大きなテーマ。継続は力である。小さくとも思い切ったチャレンジの積み重ねが新しい流れに繋がると信じる時に光が見えてくる。大西、関根たちにとって大切なのは、これからもメーカーと取引先の両方にとって良きパートナーであること、そしていつまでも玩具の魅力を伝えていこうとする企業と共に歩む道を模索することだと改めて確信している。 |
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